講演「人口減少時代の国家グランドデザイン」

日 時:平成23年8月6日(土)14:00~17:00
主 宰:政策マーケティング研究会 
テーマ:「人口減少時代の国家グランドデザイン」

★政策マーケティング研究会は、20代から40代のビジネスパーソン中心の勉強会。マーケティング会社、シンクタンク、商社、生保勤務、行政書士、病院長など第一線で活躍している方々約20名が参加。その第一回勉強会で講演させていただきました。土曜日の午後2時からの勉強会に続いて、居酒屋に場所を移して夜まで議論は続きました。私にとっても良いインプットを沢山頂きました。

<講師自己紹介>
元々は住友銀行および大和証券SMBCの金融マンであり、DNAはビジネスパーソン。NY勤務やフランスのビジネススクール留学など海外を経験。35歳のときに政治家を志し退職し、大学院で近代史を勉強した。衆議院議員を一期4年務め、現在所謂充電中。昨年、日本の未来研究所を立ち上げ、政官財学などの経験を基に、21世紀の国家グランドデザインについて検討を進めるため、勉強会や講演など幅広く活動を行っている。

<講演趣旨>
人口減少は人類社会発展の一つの到達点である。いま私たちは成熟社会を創り上げるための産みの苦しみのただ中にある。経済発展の結果として、人口減少、高齢化、無縁社会化、経済縮小、財政危機などの課題が顕在化する必然性について明らかにするとともに、政治史や人口学の観点の分析も加え、人口減少時代における国家経営や国民生活のあり方について考える。

<講演要旨>

1.人口減少の捉え方
 日本の人口は過去100年で3倍に、将来100年で3分の1になる。その背景には多産多死→多産少死→少産少死→人口減少に至る人口転換のメカニズムがある。また、人口減少高齢化が進むと、経済活動が拡大しない一方で社会保障費が嵩むため、国家財政は圧迫される。
 これまでの数十年は、本来は人口減少時代に備えて、社会システムが持続可能となるよう国家グランドデザインを描き直す時期であった。しかしバブル崩壊により時機を逸した。加えて、景気対策などのため公的債務は急増し世界最悪の累積債務国となった。社会保障費は毎年1兆円ペースで増加し歳出抑制が困難な中で、国債発行の許容額もそろそろ限界に達する。
 欧州の先進諸国は人口増減がゆっくりでかつ数十年前から人口転換への備えを始めていた。一方、日本は増減が急激でかつ対応が遅れている。日本の場合、当面は急激な人口減少が不可避であるが、いずれ出生率を人口置換えレベル2.07まで回復することで人口崩壊は避けなければならない。

2.維新後の日本政治
 戦前と戦後の歴史を観察すると、国の発展・崩壊のパターンが見えてくる。発展期に続く天皇崩御の後にデモクラシーの時代を経て政治不信に陥る。戦前はその後軍部の台頭を許した。現在は二大政党制が実現したのちの政治不信増幅期か。政党政治を立て直せるのか、それとも新たな体制が生まれるのか、瀬戸際である。
 日本社会は一度価値観をセットするとなかなか変えない。戦前は帝国主義世界の中で軍事増強に邁進し、戦後は資本主義世界の中で経済発展に邁進した。いまのまま景気対策や社会保障制度を重視した政策を続けると、財政破綻すなわち経済的敗戦を迎えるのではないか。いかに回避するかが政治の課題だ。
 日本の民主主義は段階的に発展してきた。戦前は天皇主権、戦後は国民主権であったが事実上官僚主導であった。いよいよ真の国民主権を実現するときだ。

3.日本国家の特徴
 戦後日本は強大な経済力を背景に必要な食糧・資源や資材それに安全保障まで獲得してきたが、今後はグローバル化の中で日本の経済力は相対的低下するので、新たな国のあり方を構想しなければならない。
 2100年に向けて世界中の国々の発展レベルが均一化していくだろう。国の経済規模は人口で決まるようになるが、国の影響力は所謂ソフトパワーで決まるのではないか。日本独自のライフスタイルや文化伝統、国民性を活かした国づくりを進めるとともに、外交力の強化が重要だ。

4.人口減少時代の国家経営・国民生活
 人口減少・経済縮小を想定して、国家経営のあり方の検討を進めなければならない。社会保障制度の見直し、都市部へ人口集中への対応、シルバーポリティックスへの対応など。そして、時代の転換を進めるために強い政治的リーダーシップが必要となる。現行の議院内閣制をベースに国民が総選挙で首相と政策を直接選べる政治システム、首相公選的議院内閣制を確立することが近道だ。
 また、人口減少高齢化社会では、財政的制約から公助に依存した国民生活は維持できない。したがって自助共助型ライフスタイルを新たに構築しなければならない。そのために家族・親族ネットワークの充実や地域コミュニティーの活性化が重要になる。私たち国民の意識改革や価値観転換も必要になる。

 1900年から2100年にかけて、人口は放物線を描く。そして、経済力は最初の100年は急上昇してその後天井に張り付く、そして、政治は上下動を周期的に繰返す。これからの100年を考えるとき、まずは急激な人口減少を前提としなければならない。その上で課題は、第一に、人口減少高齢化時代に合った社会システムをつくること。第二に、経済力を維持向上させること。第三に、強い政治的リーダーシップを確立することだ。