寄稿「中選挙区制復活で、政治に活力を!」
■政権交代から二年。いよいよ中選挙区制の導入を検討する時機がきた。
「民意集約」の小選挙区制、「民意反映」の中選挙区制。時代の方向性が定まらない今だからこそ、多様な意見を反映できる中選挙区制導入が必要だと思う。
それに、ねじれ国会が常態化し、与野党協議が成り立たちにくい状況が続くことで、国政の停滞が問題となっている。定数複数人の中選挙区制に変更することで、与野党連立や連携がスムースになる。
加えて、政治家の小粒化が嘆かれて久しい。実際に衆議院議員を経験して思うことは、勝率5分5分の選挙が続くと政治家は育たない。2005年に初当選した私の同期は私も含めほとんどが浪人中である。
中選挙区制は、1947年に小選挙区制導入の過渡的措置として導入された。そして、約半世紀後の1994年に小選挙区制に移行し、その15年後の2009年に政権交代可能な二大政党制が実現した。しかし、いまから振り返れば、実は小選挙区制は2009年をピークに機能不全に陥ったのではないか。小選挙区制の弊害が露呈し、政治システム自体を瓦解させてしまったように思う。民主党が選挙目的で実現不可能な政権公約を掲げた罪は大きいと思う。
自民党の谷垣総裁は、10月13日の記者会見で、「今の小選挙区を中心とした制度の弊害が表れています。...あまりに振幅が激し過ぎますと、なかなか若い政治家も育っていかない」と述べた。いよいよ野党第一党の党首も小選挙区制の弊害を明言した。
小選挙区制の弊害に対する認識を共有したのであれば、一刻も早く制度改正をした方が良い。選挙制度の歴史を振り返ると、大きな選挙法改正は大きな政策転換と連動することがある。1900年の大選挙区制導入は地租増徴と、1925年の中選挙区制導入は普通選挙制度導入と連動した。
現在は、人口減少高齢化やグローバル化対応などの国内問題に加え、欧米金融危機が予断を許さない状況となっている。日本の国を着実に一歩ずつ前に進めるために、国民の力を一つにまとめるために、中選挙区制導入を一つの契機にしたい。
■小選挙区制は一定の成果を上げたが、弊害の方が大きくなった。
中選挙区制は、1925年に初めて導入されて以来、1993年総選挙まである一時期を除いてほぼ一貫して採用されてきた選挙制度である。
世界的には中選挙区制を採用している国は珍しいが、日本でこの制度が採用された理由は、1925年当時は、大選挙区制と小選挙区制による特定の勢力の勃興を阻止することであった。大選挙区制では、労働者や農民勢力の政治化の可能性があった。小選挙区制では、政友会などの既成政党の強大化の可能性があった。そこで、普通選挙制度の導入とあわせて、中選挙区制を導入した。
占領下の1945年に一旦は大選挙区制が導入されるが、1947年には中選挙区制が復活した。直接的な理由は、1946年の大選挙区制選挙で共産党の躍進を許したことであったが、本質的には、二大政党主義に適合した小選挙区制への過渡的方式として中選挙区単記制が構想された。
その後約半世紀に亘って中選挙区制が運用されてきたが、1980年代後半から1990年代前半にかけて政治改革の必要性が議論され、1994年に小選挙区制が導入された。
小選挙区制導入に際して、中選挙区制の問題点を踏まえて、いくつかの目的が掲げられた。第一に、「政党本位」。中選挙区制では、同一政党の政治家同士の戦いが生じ、政党間の争点をめぐる選挙戦になりにくかった。第二に、「金権打破」。候補者が政党組織とは別に個人支援組織をつくることなどから選挙に金がかかっていた。第三に、「派閥解消」。政党内に派閥が発生し、派閥間抗争が激化する原因となっていた。
小選挙区制を導入したことで、政党本位、金権打破、派閥解消などの主要目標について一定の成果を納めた。しかし、その一方で新たな問題が発生した。
第一に、政党による大規模なバラマキ政策。従来の政治家個人規模のバラマキは少なくなった一方で、政党自体が掲げる政策が財源の裏付けのないバラマキになった。子ども手当に象徴されるように、金額は兆円単位となり、国家の財政運営を左右する規模となってしまった。
第二に、政治家の質の低下。政党本位が浸透することで、有権者は政治家個人を評価するのでなく、政党を評価対象とするため、結果として政治家個人が切磋琢磨する機会が減り、政治家の質の低下を引き起こしてしまった。
第三に、首相候補の質の低下。かつての自民党の派閥間競争は党内における政権交代であり、その中でリーダーシップが磨かれていった。派閥機能が低下する中で、政治家グループのリーダーとして、国家行政機関のトップとしての準備をする機会が少なくなった。
第四に、ねじれ国会の常態化。二大政党化で対立構図が固定化したうえに、2004年から進展した参議院の二大政党化により、衆参ねじれ国会は2007年以降常態化した。このままでは今後も、政権交代の度にねじれ国会を経験することになる。小選挙区制導入を検討している段階では、想定していなかった事態の発生である。
政党本位の政治システムにおいて、本来であれば政党がこれらの問題を解消しなければならない。ただし、政治実態はそれほど容易ではなく、政党自身が政策づくりの適正化や政治家ならびに首相候補の養成を担うことは十分に可能とは考えられない。
■定数三人の中選挙区制はどうか。
いよいよ中選挙区制の導入を検討しなければならない。
政治学者の北岡伸一東京大学教授は、最近、定数三人の中選挙区制を提唱している。自民党派閥の変容から派閥政治への回帰はない、無責任で非現実的な政策を掲げる政党もごく少数であるとことから、従来指摘されていた中選挙区制導入の弊害は限定的と考えられる。そして、定数を三人とすることで、政党間の競争は残しつつ、圧倒的多数党の出現を抑え、また、極端な政策の人は当選しにくい制度としている。
それに加えて、中選挙区制の導入は、少数意見を反映しやすい仕組みとなる。例えば、都市住民の意見や若者の意見が政党内で取り上げられる様になったり、新しい政治グループができるかもしれない。中選挙区制は政治にダイナミズムを取戻す切り札になる可能性を持っている。
月刊カレント2011年11月号掲載
(10月17日記)



